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30代サラリーマンの住宅購入は本当に危険か? シミュレーション結果を分析 2011/08/18/|ファイナンス

先日、こんな記事を見かけました。

サラリーマン、家を買うなら60歳・現金で :マネーお得情報:マネー :日本経済新聞

要約すると、住宅ローンを抱えるリスクはここ数年格段に高まっており、マイホームを購入するなら60歳になってから現金で買うのがお勧め、その間は住宅購入にまつわる諸費用分を貯蓄し少しでも増やしておく、という話です。

実際に、子供が2人いる30代半ばのサラリーマン家庭をモデルケースとし、どれだけ危険かの試算をしているのですが、どうにも腑に落ちなかったため、自分なりに解析してみました。

50代で赤字が3,000万円を越える!?

モデルケースの条件は以下のようになっています。

  • 35歳 貯蓄1,000万円、年収600万円、専業主婦家庭(途中10年間、年収100万円あり)
  • 未就学児 2名
  • 物件価格 5,000万円
  • うち、頭金 750万円
  • 金利 3.0%, 25年固定ローンを利用

この条件から得られたキャッシュフローグラフが以下。

サラリーマン、家を買うなら60歳・現金で :マネーお得情報:マネー :日本経済新聞 グラフA


サラリーマン、家を買うなら60歳・現金で :マネーお得情報:マネー :日本経済新聞 グラフA


50代で赤字が3,000万を越えるなんて言われると怖くなってしまいますよね。青色のグラフは年収700万円の場合ですが、これでも赤字は1,500万円にもなります。以降話は続き、共働きであれば問題ないことを示したあと、タイトルにもなっている「家を買うなら60歳」をシミュレーションしています。

そのグラフが以下に示したものです。年収700万円の場合のシミュレーションです(あえて年収700万円のケースを扱っているところがポイント)。

賃貸なら貯蓄がグングン増える?

サラリーマン、家を買うなら60歳・現金で :マネーお得情報:マネー :日本経済新聞 グラフC


サラリーマン、家を買うなら60歳・現金で :マネーお得情報:マネー :日本経済新聞 グラフC


確かに、賃貸の場合は住宅ローンと違い、固定資産税や修繕積み立て金、管理費等が不要となります。その分を貯蓄に回した結果、貯金は増えていきます。しかしながら、これで安心して生活できますか?

57歳ので貯蓄は限りなくゼロに近づきます。また、このケースは年収700万円の場合です。つまり、同じシミュレーションを年収600万円で行えばやはり破綻することになります。

これでは、「賃貸の方が安心でゆとりを持った生活ができる!」と言うのには説得力に欠けるように思いませんか。

そもそも、これらのシミュレーションにはいろいろな問題点が隠されているように感じました。私はプロではないのであくまでも素人目線ですが、これまで数年に渡りキャッシュフローをつけてきた経験などから気になった点をあげていきます。

ご注意:以下の分析、シミュレーションはあくまでも素人である私の個人的な見解です。プロではありませんので、見積もりの甘い部分や抜け等もあるかもしれません。ご了承ください。

その物件価格はありですか?

タイトルは物件価格としましたが、本来は、物件価格というよりもローン借り入れ額に注目すべきですね。モデルケースでは、親からの資金援助等はなくすべて自分でまかなうということなので、物件価格がそのままローンの負担につながってきます。では、実際に試算してみましょう。

4,250万円(750万円は頭金で支払い済み)を3.0%、25年固定ローンで借りると、月々の返済額は20万を超えることになります(正確には201,539円)。年間返済額は240万円を越え、返済負担率(年収に対する住宅ローン返済の割合)は40%を越えることになります。

まず、ここが問題ですね。返済負担率40%というのはかなりギリギリのラインです。融資可能な最大の返済負担率が35%であるフラット35は完全にアウトです(【フラット35】のご利用条件)。

大手の民間ローンも、返済負担率35%を最大としているところが多いように思います。

つまり、そもそもこのモデルケースのようなローンは非現実的です。30代で住宅を購入することが危険なのではなく、年収600万円でこのローンを選択することが間違っているのです(金融機関が選択させてくれないでしょう・・・)。

この場合、期間を長くして月々の返済額を減らすという手もありますが、それでも全体的な圧迫感は抜けません(例えば35年固定、同金利で返済負担率33%くらい)。

やはり、物件価格の設定にちょっと無理があるように感じますね。

生活費はおいくら?

次の疑問点です。具体的に示されていなかったのが生活費(イベント費含む)。どれだけの生活費を見越しているのでしょうか。手元にあるキャッシュフロー表でざっと計算してみたのですが、おおよそ年間420万円(月々35万円)程度の生活費を見越しているように思います。

計算してみた条件は以下です。

なお、試算において妻の年齢は30歳と仮定し、その上で40〜50歳まで100万円のパート収入を追加しました。また、住居費は余裕をもって設定したつもりです(団信は住宅ローン金利に含まれているとみなします)。

月々35万円の生活費というのはどうでしょう。総務省の家計調査によると、平成22年の平均支出は318,315円(世帯人員3.41人)。これを4人家族に単純換算してみると373,390円。およそ37万円です。ただし、ここには住居費や教育費も含まれていますので、それらをのぞくと33万円くらいになります。

参照:月々の生活費は平均していくらくらい? | 公益財団法人 生命保険文化センター

これならシミュレーションは妥当なようにも見えますが、年齢別の生活費を見てみると30代で4人家族に換算すると、住居、教育費を除いて25万円ほどになります。同様に40代では30万円となります。

つまり、年齢別に見ると月々10万円ほど平均よりも余裕をもった暮らしをしていることになるのです。シミュレーション開始時の年齢を考えても、年間360万円くらいでスタートで問題がないように感じました。その代わり、物価上昇率の0.5%に加え、生活費も0.5%ほど上昇していくこと想定すると、平均的な数値に近づく気がします。

共働きでないと本当に家は買えないのか?

一番気になるところですよね。ざっくりですがシミュレーションしてみました。グラフは縦軸が貯蓄残高(万円)、横軸が年齢(35歳〜84歳)です。生活費はスタート時点で360万円とし、上昇率を1%としました。それ以外の条件は上述したとおりです。

また、住宅維持費(修繕積み立て費、固定資産税、管理費)を生涯に渡って多めに見積もっているため、老後の住居費負担が実際より多くなっていると思います。

年収600万円、5,000万円の物件

まず、年収600万円の場合。この場合、上にも書いたようにそもそも5,000万円という物件価格にはさすがに無理があります。賃貸だって20万円の家賃は払えないでしょう。

キャッシュフロー 年収600万 ローン4250万

  • 年収:600万円
  • 物件価格:5,000万円
  • 頭金: 750万円
  • ローン借入額: 4,250万円
  • 金利: 3.0%
  • 期間: 25年


そのそも、問題点は住宅購入か賃貸かではなく、収入に対する住居費の割合です。

ローンの借入金額を見直す必要がありそうです。月々12万円の返済であれば問題なく返済できるのではないでしょうか(負担率25%)。

年収600万円、3,200万円の物件

例えば、物件価格3,200万円の場合。頭金200万円、ローン借り入れ額3,000万円とし、長期固定金利3.0%で35年ローンとすれば(25年では無理)、月々11.5万円で収まります。

キャッシュフロー 年収600万 ローン3000万

  • 年収:600万円
  • 物件価格:3,200万円
  • 頭金: 200万円
  • ローン借入額: 3,000万円
  • 金利: 3.0%
  • 期間: 35年


家計が一番苦しくなるのは、子供たちが大学に進学する時期です。それ以降は少し余裕が出てくるので、ローンの期間を長くし、月々の負担を少なくするという考え方もあると思います。

グラフからも意外と安定していることが確認できます。これは、頭金を減らし、最初に貯蓄がぐっと減るのを押さえたためですね。

年収700万円、5,000万円の物件

では、年収700万円で5,000万円の物件を選んだ場合はどうでしょう。上記サイトとの違いは生活費です。上述したように年間420万円程度の生活費を年間360万円に変更してシミュレーションしてみました。

キャッシュフロー 年収700万 ローン4250万

  • 年収:700万円
  • 物件価格:5,000万円
  • 頭金: 750万円
  • ローン借入額: 4,250万円
  • 金利: 3.0%
  • 期間: 25年


見た目上はどうにかやっていけそうな感じです。ただし、それでもまだ返済負担率が35%近いので油断は禁物。

今一度、物件価格の再検討と、住宅ローンの選定、生活費の見積もりに問題がないかを見直した方がよさそうですが、ここをクリアすれば夢のマイホームを手にしてもいいように感じます。

最後に金利のお話

こういうシミュレーションをする際には、金利はあまり楽観視しない方がいいと思っているので、3.0%でのシミュレーションはありだと思います。

ただ、現在、本気で住宅購入を検討している方にとってはあまり親切な数字ではないですね。近年、住宅ローンの金利はびっくりするくらい下がっています。変動金利であれば1.0%を割っているものも見受けられます(これらがいいローンかという話はおいておいて)。

ここでは長期固定のローンを前提としているので、例えばフラット35を見てみましょう。

こちらで、フラット35の都道府県別金利が検索できます。
最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】

東京都で検索してみましたが、団信の保険料(0.358%)を加味しても3.0%を越えるものは数少ないかと思います。

金利が変わればシミュレーション結果は大きく変わってきます。特に、長期固定金利であれば実際の数字を利用してシミュレーションしてみても問題ないのですから(変動の場合リスク管理が必要です)、あえて高めに設定する必要はないと思います。

まとめ

ずいぶんと長くなってしまいましたが、あまりにも記事の内容が腑に落ちなかったのでいくつかシミュレーションしてみました。何事も鵜呑みにするのはよくないですからね。

それぞれ自分の立場にあったシミュレーションをして、自分のライフスタイルを確立していくのが一番です。

60歳で家を買う人生が本当に幸せなのか、価値観も人それぞれです。若いうちに住宅を購入すれば、住宅ローンという足かせができる代わりに、住宅所有という満足感を得ることもできます。

備えあれば憂いなし。人に頼らず、まずは自分で人生設計をしてみることをお勧めします。楽しいですよ。

住宅購入のためにいろいろと資産検討をしてみたい方、以下の本がお勧めです。

ローンシミュレーションは是非iLoan Calcで!

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